トーナメント仕様なのにハイコストパフォーマンス。「意識高い系バスロッド」として一世を風靡したレジットデザイン・ワイルドサイド。ファンも多い反面、やたらと折れ報告が多いことから「ポキ竿」なんて呼ばれていたりしますが、実際のところどうなんでしょうね~。
実は僕も2016年に買ったものを1本だけ所有していますが、折れずにちゃんと残っています。それどころか、魚釣っていませんし、登板回数も購入直後の数回だけだったと思います。笑
最近使っていないロッドを整理していて、異様に使ってほしそうにしているワイルドサイドが目に留まったので、実戦投入準備に取り掛かりました。
目次
WSC65MH Frog Game Special
僕のワイルドサイドはごく平凡な番手ではなくて、フロッグゲームスペシャルのサブネームを冠するWSC65MHです。これね、登場と同時に人気の爆発したワイルドサイドシリーズの中でも特に爆発した番手だったかと思います。
今は普通に買えるんだと思いますが、発売当時はボート向けのショートフロッグロッド自体が珍しかったこと、スロー寄りなアクションが実はスピナーベイトやビッグミノーにドンピシャだったこと、JBTOP50北大祐プロのウィニングロッドだったこと…などなど、純粋にボートフロッグをやりたいだけのピュアな釣り人にとっては大変メーワクな理由で人気に火がついてしまい、どこもかしこも入荷待ちの状態が続いていました。

ワイルドサイド65MHフロッグゲームスペシャル
で、まったくもって買う気はなかったんですけど、たまたま釣具屋の店員が入荷処理をしているところに出くわしてしまい、気づいたらお持ち帰りしていたってわけ。
今回はインプレをやるわけじゃないので、スペックは公式サイトを見てください。
即補欠入りしたかわいそうな奴
購入しちゃったもんだから、とりあえずそれに見合ったフロッグ類はタコ買いしたし、リールも専用に購入し、完璧なセッティングを出したつもりでいました。にもかかわらず、実際ボートフロッグや野池の釣りで使ってみたんですが、どうもしっくりこない…。
ロッドそのものが気に入らないわけではないんです。キャストもビシバシ決まるし、フロッグの首振りアクションもめちゃくちゃやりやすくて、さすがはフロッグスペシャルを名乗るだけのことはあるなって感じ。控えめに言って、ズバリ最強クラスの使いやすさです。
それに反してとても残念なのが、作りが雑ということ。ガイドフット糸止めのエポキシは盛り過ぎでガイドフレームまで垂れてしまってるし、ワインディングチェックは傾いているし、グリップの接着もズレていてセンターが出せていないし…。
A型、かつ「女の腐ったようなやつ」と自負する僕にとっては、そういう細かなところが気になってしょうがなかったんです。とにかく、言葉で説明するのが難しいのですが、コルクグリップとエンドキャップ(ラバーコルク)のセンターがズレているのが一番ダメでした。
まあ、メイドインチャイナだからな。
コルク自体もカスカスで、定価4万超えのロッドと比べれば悪いとしか言いようがない。で、2、3回使ったっきりで補欠用ロッドスタンド行きになりましたとさ。
とはいえ3万円ぐらいしたんだから使わないともったいない。なんて考え始めたのが真冬ですから、すでにハイシーズンは終了。それなら2019年の夏こそはガンガン使えるようにカスタムしてやろうと思ったわけ。
WSC65MH復活の儀式
エポキシを割って糸をほどいてガイドを巻きなおす…なんてことをやると金と時間がかかりすぎて本末転倒になりかねないので、今回はグリップを変えます。
せっかく手間暇かけるので、下記点の改良を目的とします。
- センターを出す
- グリップ力の向上
- ビジュアルの向上
③に関しては主観なので、とにかく①と②だけはマストですね。
①については、リールシートの接着自体がセンターからズレてしまっていることも予想できるので、そうなるとグリップをど真ん中で接着するのが構造上難しくなってきます。
なので、接着後の整形で「まるでセンター風」に調整する必要があることを想定し、整形の容易なEVAグリップを採用することにしました。そうすると、ついでに②グリップ力も同時に実現できますからね~。
準備するもの
実はこれまでにもグリップの換装は何度かやっているので、慣れているとまでは言えないものの、ド素人なりの手際があります。
最初の段階で準備するものはメジャー、カッターナイフ、ペンチ、サンドペーパー(#160前後)、ノギス。作業を進めたうえで、グリップ、エンドキャップ、タコ糸(Φ0.9mm)、瞬間接着剤、エポキシ接着剤、耐水ペーパー(#400前後)が必要になります。
工程
工程はざっくばらんに書いくと、下記の通りです。
- グリップ破壊
- サンディング
- グリップ・エンドキャップ購入
- エンドキャップ内径調整
- EVAグリップカット
- 糸巻
- 接着
随所、必要に応じて採寸や整形を行います。つべこべ言っていてもしょうがないので、さっそく作業に入ります。
グリップ破壊
まず、およそ同じ長さに仕上げたいのでデフォのグリップ長を測ります。

デフォのグリップを採寸
この時点では、ブランクがエンドグリップのどこまで通っているのか不明です。

グリップエンドからリールシートまではおよそ245mm程度
その後、コルクグリップにカッターナイフでスリットを入れ、ペンチでコルクをむしり取ります。

とにかくがむしゃらにグリップをはぎ取る
この段階では、まあまあ雑にやってもOKです。
今回は思いのほか接着が甘く、超スピードで剥がせてしまいました。

なんか簡単に剥がせてしまった…
でもそのおかげで、グリップを剥がす時間はあまりかかりませんでした。笑
サンディング
ガッチガチに固まったエポキシをある程度カッターで削り取り、サンドペーパーで均します。こうすることでブランクスが真円に近づき、センターが取りやすいことに加え、表面が荒れるため接着のノリが良くなります。

白く残っているのがエポキシ
また、エンド部分にエポキシが溜まっていることがありますが、これを無理して取るとブランクスの裂けなどに繋がるケースが多いので、無理して取る必要はありませんよ。
その昔、こいつを無理やり奇麗にしようとして割ってしまったことがあります。

エンド部分にエポキシだまりがあるけど、無理して取らない方がイイ
納得のいくまでキレイに均せたらOKです。
グリップ・エンドキャップ購入
ある程度キレイに均し終えたら、グリップ接着部分の長さと太さを採寸します。
リールシート付近とエンド付近の径をそれぞれノギスで採寸すると、テーパーがかかっていることがわかりました。この部分のテーパーは、ロッドによってはかかっていないこともあります。
グリップから竿先までが1本の素管で組み上げられている=ブランクスルー製法の場合は最後までテーパーがかかります。
ここで採寸した外径は、購入すべきグリップの内径とニアリーイコールなので、しっかりメモします。
グリップ長はエンドキャップを含め245mm、エンドキャップは長寸30mmのハイカコルク製ラウンドタイプにしたいのでEVAグリップは20cmちょいあれば事足りますが、万が一のことを考え500mmを。
外径はECSリールシートなので27mmがフィット。ACSの場合は28mmですね。
今回はエンド付近=もっとも太い部分の外径が14mmだったので、本来は内径15~16mmぐらいが丁度いいことになるんですが、細い側が13mmだったのでエンド側の微調整を前提に内径14mmのSRG27-50EBK14を購入しました。でもあくまでも表記上の径なので、この時点ではスコスコです。
エンドキャップにはいろいろな種類がありますが、今回はラウンドタイプのREC-30RCをチョイス。
内径12mmと17mmの2タイプがあるんですが、内径17mmだと3mmもかさ増しをして接着する必要があります。それなら12mmの内径を削ってぴったりに調整するほうが強度面で安心できるということで、REC-30RC12を購入しました。
エンドキャップ内径調整
エンドキャップをつけた状態でEVAのカット寸法を採寸したいので、まずはエンドキャップが取り付けられるように加工します。
すでに書いた通り、エンド部の外径が14mmなのに対し、エンドキャップ内径は12mm。2mmだけ削ってやる必要があるので、サンドペーパー(#160)でザグっていきます。

荒めのサンドペーパーを丸めて穴を拡張していく
ぴったりに調整できたので、EVAグリップの必要寸を採寸します。

ぴったりの内径に調整できたので…

グリップ接着部採寸(よく考えたら不要)
グリップをカットする
必要寸より1mmほど余裕を持った位置にマスキングテープを巻き、それに沿ってカッターナイフでカットします。どれだけ器用な人でも完全にまっすぐ切ることは不可能なので、ザクっと行ってしまいましょう。

ほんの少しだけ余裕を持ってカット位置を決める
切り口は耐水ペーパーで納得のいくまで均します。

調整後
タコ糸巻き
スコスコだったEVA内径とブランク外径のクリアランスを埋めるため、タコ糸を巻いて外径を調整します。巻き始めは瞬間接着剤でブランクスに固定し、テンションを掛けながら密巻きにしていきます。

タコ糸の端は瞬間接着剤で固定してから巻いていく
また、普段は上から下まで巻ききりますが、今回はブランクスにテーパーがかかっているので、外径調整が必要な部分とそうでない部分があります。そのため、一定の長さを巻いて、スペースをあけてまた巻くということをやっています。
スペースには後々エポキシが残るので、問題ありません。

今回は3か所巻きました
1か所巻き終わるごとに瞬間接着剤でガチガチに固めます。今回は調子に乗って3か所巻きましたが、なんだかんだで径の太い部分にも巻いてしまったので、さすがにEVAが通らなくなりました。笑

かさ上げすると、今度は太くて入らない
再び外径調整
入らなくなったとは言ってもこれは失敗でなく、わざとです。
タコ糸が瞬間接着剤でガチガチに固まったのを確認してから、もう一度EVAがスルっと通るようになるまで削ります。
スコスコになるまで削らないように注意が必要です。
接着
グリップの接着には、2液型エポキシ接着剤を使います。2液型エポキシ接着剤は基本的に、「メーカーによって内容物が異なる」なんてことはないので、釣具屋にあるボッタクリ製品を買う必要はないです。

2液性エポキシ接着剤
ただ、硬化にかかる時間が30分以上のものを選ぶと失敗しにくいですね。それ以上(たとえば90分)のものになると耐水性が上がったりもするので、僕は90分硬化の製品を使っています。
使用方法はどれも大体同じで、2液を同量混ぜて使います。同量計るのが面倒だし、そもそも余らせてもしょうがないので全部出しちゃいましょう。笑

余らせても仕方ないのでドバっと出して…

しっかり混ぜる
あとはコイツをブランクにドバっと塗って、EVAグリップを少しずつ差し込んでいきます。この時、余ったエポキシがあふれてくるので、随時ふき取りながら進めていきます。

少ないよりは多い方がマシなので、ギトギトに塗ります。
最後にエンドキャップにもエポキシをドバっと塗って接着。

エンドキャップにもドバっと!
ゆがみなどがあった場合は調整して、このまま24時間放置します。

エポキシが硬化するまでは垂直に立てておくのがベスト
整形
本当はEVAグリップにくびれをつけようと思っていましたが、ポン付け状態のまんまストレートな感じが思いのほかカッコよかったので、やめました。
グリップとエンドキャップが異素材ということもあって若干ですが段差ができていたので、それを均す程度で終了。
完成
というわけで完成です。

グリップ換装フィニッシュ
かかった時間…およそ4時間(接着時間除く)。かかった金…およそ3000円。
正直なところ、性能云々が大きく変わることはないですが、これで実際に使う気になれるんだったら、安いメンテナンス代だと思います。
簡単なので、使っていない竿があったらぜひ試していただきたいですね!